はじめに
ビールの味わいは、使用する原材料によって大きく変わります。この記事では、ホップ、麦芽、酵母、水に関する専門用語を、初心者の方にもわかりやすく解説します。
ホップに関する用語
アルファ酸 (Alpha Acid・α酸)
ホップに含まれる苦味成分の割合。
範囲:
- 低アルファ酸: 3-5% (アロマホップ)
- 中アルファ酸: 5-8% (デュアルパーパス)
- 高アルファ酸: 10-15% (ビタリングホップ)
使い分け:
- 低アルファ酸ホップ: 煮沸終了前や発酵中に投入、香りを付与
- 高アルファ酸ホップ: 煮沸開始時に投入、苦味を付与
代表的なホップ:
- 低α酸: Saaz (3-4%), Hallertau (3-5%)
- 中α酸: Cascade (5-6%), Centennial (9-11%)
- 高α酸: Columbus (15%), Magnum (14%)
ビタリング (Bittering)
苦味をつけるためにホップを投入すること。通常は煮沸開始時。
特徴:
- 長時間煮沸することでアルファ酸が溶け出す
- 香りは飛んでしまう
- IBU値を決定する主要な要素
アロマホッピング (Aroma Hopping)
香りをつけるためにホップを投入すること。煮沸終了5-15分前。
特徴:
- 短時間の煮沸で香り成分を抽出
- 苦味はあまり出ない
- ビールに華やかな香りを付与
ドライホッピング (Dry Hopping)
発酵中または発酵後にホップを加えて、香りを強化する技法。
タイミング: 発酵3-5日目が一般的
効果: ビールに強い香りを付与、苦味はほとんど増えない
量: 20リットルに対して25-100g (スタイルによる)
麦芽に関する用語
ベース麦芽 (Base Malt)
糖分の主要な供給源となる麦芽。レシピの70-100%を占める。
種類:
- ペール麦芽: 最も一般的、幅広いスタイルに使用
- ピルスナー麦芽: 淡い色、軽い味わい
- ウィーン麦芽: やや濃い色、パンのような風味
- ミュンヘン麦芽: 濃い色、麦芽の甘味が強い
特徴:
- デンプンを糖に変える酵素を持つ
- 高い糖化力
- ビールの基礎となる味わいを形成
スペシャルティ麦芽 (Specialty Malt)
色、香り、味わいを追加するための麦芽。通常は10-30%。
種類:
- カラメル麦芽: 甘味とボディ
- ローストした麦芽: 色とロースト香
- ウィート (小麦) 麦芽: クリーミーな泡
- チョコレート麦芽: チョコレート風味
- ブラック麦芽: 深い色と焦げた風味
役割:
- ビールに複雑な味わいを加える
- 色を調整する
- 泡持ちを改善する
Lovibond (ラビボンド)・L
麦芽の色の濃さを示す単位。数値が大きいほど濃い色。
例:
- ペール麦芽: 2-3L
- カラメル麦芽: 40-60L
- チョコレート麦芽: 350-450L
- ブラック麦芽: 500-600L
使い方:
- レシピの全麦芽のL値を計算
- SRM値を予測できる
- 色の調整に使用
酵母に関する用語
エール酵母
温度: 18-24℃
特徴:
- 発酵が速い (3-7日)
- フルーティーな香り
- 上面発酵
代表例: US-05、Nottingham、S-04
適したスタイル:
- ペールエール
- IPA
- スタウト
- ベルジャンエール
ラガー酵母
温度: 8-15℃
特徴:
- 発酵が遅い (2-3週間)
- クリーンな味わい
- 下面発酵
代表例: W-34-70、SafLager、S-23
適したスタイル:
- ピルスナー
- ヘレス
- ボック
- メルツェン
フロキュレーション (Flocculation)
酵母が凝集して沈殿する能力。
分類:
- 高: 早く沈殿、ビールが早く清澄化
- 中: バランス型
- 低: 長く浮遊、発酵時間が長い
影響:
- 清澄化の速度
- ビールの透明度
- 発酵終了のタイミング
水に関する用語
pH (ペーハー)
水の酸性度・アルカリ度を示す指標。
理想的な範囲:
- マッシング: pH 5.2-5.6
- スパージング: pH 5.8以下
- 仕上がったビール: pH 4.0-4.5
調整方法:
- 酸を加えてpHを下げる (乳酸、クエン酸)
- アルカリを加えてpHを上げる (炭酸カルシウム)
硬水・軟水
水に含まれるミネラルの量。
硬水:
- カルシウム・マグネシウムが多い
- ビタリング効率が良い
- IPAに適している
軟水:
- ミネラルが少ない
- マイルドな味わい
- ピルスナーに適している
ミネラルの役割:
- カルシウム: 酵素の働きを助ける
- マグネシウム: 酵母の栄養
- 硫酸塩: ホップの苦味を強調
- 塩化物: モルトの甘味を強調
まとめ
原材料の特性を理解することで、より良いビールを作ることができます。
原材料選びのポイント:
- ホップ: アルファ酸とアロマの特徴を理解
- 麦芽: ベース麦芽とスペシャルティ麦芽のバランス
- 酵母: スタイルに合った温度と発酵特性
- 水: pHと硬度を意識
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