はじめに
このレシピは、ホームブリュー初心者の方でも失敗しにくい、シンプルなペールエールのレシピです。
材料は最小限に絞り、手順もできるだけシンプルにしました。初めてのビール作りに最適です。
⚠️ 重要:酒税法に関する注意事項
日本の酒税法では、アルコール度数1%以上の酒類を免許なしで製造することは禁止されています。
- 個人がビールやワインなどを醸造する場合、アルコール度数を1%未満に抑える必要があります
- アルコール度数1%以上の酒類を製造するには、税務署から酒類製造免許を取得する必要があります
- 違反した場合、酒税法により処罰される可能性があります
当ブログで紹介するレシピや醸造方法は、主に教育・研究目的の情報提供です。
実際に醸造される際は、以下のいずれかの方法をお取りください:
- アルコール度数1%未満のノンアルコール・低アルコール飲料として製造する
- 酒類製造免許を取得する
- 海外など、法律が異なる地域で製造する
法令を遵守した上で、ビール作りの知識と技術をお楽しみください。
レシピスペック
- スタイル: アメリカンペールエール
- バッチサイズ: 20リットル
- ABV: 約5.2%
- IBU: 約28
- SRM: 8(ゴールデンアンバー)
- OG: 1.052
- FG: 1.012
必要な材料
麦芽(合計4.5kg)
| 麦芽 | 量 | 割合 | 役割 |
|---|---|---|---|
| ペール麦芽 | 4.2kg | 93% | ベース麦芽、糖分の主要供給源 |
| カラメル麦芽 | 300g | 7% | 色、ボディ、甘味の追加 |
ホップ(合計45g)
| ホップ | 量 | α酸 | タイミング | 役割 |
|---|---|---|---|---|
| Cascade | 25g | 5-7% | 煮沸開始時 | ビタリング(苦味) |
| Cascade | 20g | 5-7% | 煮沸終了5分前 | アロマ(香り) |
ホップ選びのポイント:
- Cascadeは柑橘系の香りが特徴
- 入手しやすく初心者向き
酵母
- US-05(Safale) - 1パック(11.5g)
- または Nottingham - 1パック
その他
- プライミングシュガー: 120g(ボトリング時)
- 水: 約30リットル(仕込み用 + すすぎ用)
必要な道具
基本的な道具については、以下のガイドをご覧ください。
追加で必要なもの:
- 比重計または屈折計
- pH試験紙(あれば)
醸造手順
前日の準備
-
酵母のチェック
- 酵母の賞味期限を確認
- 室温に出して温度を上げておく
-
道具の確認
- すべての道具が揃っているか確認
- 発酵容器、煮沸鍋などを洗浄
-
水の準備
- カルキ抜きした水を準備
- 一晩置くか、浄水器を通す
醸造当日(所要時間: 約5-6時間)
Step 1: マッシング(糖化)- 90分
目的: 麦芽のデンプンを糖に分解する
1. お湯を沸かす
- 13リットルの水を65℃まで加熱
2. 麦芽を投入
- 粉砕した麦芽を少しずつ投入
- ダマにならないようかき混ぜる
3. 温度調整
- 目標温度: 65-67℃
- この温度を60分間キープ
4. マッシュアウト
- 温度を75℃まで上げる
- 10分間保持
温度管理のコツ:
- 鍋を毛布やタオルで包むと保温できる
- 温度が下がったら弱火で加熱
- かき混ぜすぎない(5-10分おきに確認程度)
糖化の確認方法:
- 少量の麦汁をスプーンで取る
- ヨウ素液を1滴垂らす
- 変色しなければ糖化完了
Step 2: ラウタリング(濾過)- 60分
目的: 麦汁と麦芽粕を分離する
1. 濾過の準備
- 濾過バケツまたはザルを準備
- ネットや布巾を敷く
2. 一番麦汁の回収
- ゆっくりと麦汁を濾す
- 最初の1リットルは再度かける(清澄化)
3. スパージング(すすぎ)
- 75℃のお湯10リットルを準備
- 麦芽粕に少しずつかける
- 合計15リットルの麦汁を回収
濾過のポイント:
- 急がない(濁りの原因)
- 麦芽粕の層を崩さない
- 最後まで絞りすぎない(タンニン抽出防止)
Step 3: 煮沸 - 75分
目的: 麦汁の殺菌、ホップの投入
1. 麦汁を沸騰させる
- 強火で加熱
- 沸騰直前は吹きこぼれ注意
2. ホップ投入スケジュール
- 0分(煮沸開始): Cascade 25g 投入
- 55分経過: なし
- 70分経過: Cascade 20g 投入
- 75分: 火を止める
3. 煮沸中の注意点
- 中火を保つ
- 蓋は開けたまま
- 時々かき混ぜる
煮沸のポイント:
- 活発な沸騰を維持
- ホップ投入時は吹きこぼれ注意
- タイマーを使って正確に
Step 4: 冷却 - 30分
目的: 麦汁を発酵温度まで急冷
1. 火を止めたら直ちに冷却開始
2. 冷却方法(選択)
方法A: 氷水浴
- 鍋を氷水の入った容器に浸ける
- 水を時々交換
方法B: 冷却コイル
- 冷却コイルを鍋に入れる
- 水道水を流す
3. 目標温度: 20℃以下
冷却のポイント:
- できるだけ早く冷やす(雑菌繁殖防止)
- 20℃以下になったら次の工程へ
- 冷却中は蓋をする
Step 5: 発酵容器への移送と酵母投入 - 30分
目的: 清潔な発酵容器に移し、発酵を開始
1. 道具の除菌
- 発酵容器を除菌剤で洗浄
- サニタイザーをすすがずに使用
2. 麦汁の移送
- サイフォンで静かに移す
- トラブ(底の沈殿物)は残す
- エアレーション(空気混入)を行う
3. 比重測定
- 少量サンプルを取る
- 初期比重(OG)を記録
- 目標: 1.052前後
4. 酵母投入
- 酵母を麦汁表面に振りかける
- かき混ぜない
5. 密閉
- エアロックを取り付ける
- 水を入れる
移送のポイント:
- 酸素を適度に混入させる(発酵初期に必要)
- トラブは残す(雑味の原因)
- 温度が20℃以下であることを確認
発酵期間(2週間)
主発酵(1週目)
1日目:
- 酵母投入後6-12時間で発酵開始
- エアロックから泡が出始める
2-3日目:
- 最も活発な発酵
- 大量の泡が出る
- クラウゼン(泡の層)形成
4-7日目:
- 発酵が落ち着く
- 泡が減少
- ビールが透明になり始める
発酵温度: 18-22℃を維持
観察ポイント:
- 毎日エアロックの動きをチェック
- 温度を測定して記録
- 異臭がないか確認
二次発酵(2週目)
8-14日目:
- ゆっくりと熟成
- 残った糖分を発酵
- 酵母が沈殿
- 透明度が増す
14日目: 最終比重測定
- サンプルを取る
- 最終比重(FG)を測定
- 目標: 1.012前後
- ABVを計算: (OG - FG) × 131.25
Step 6: ボトリング - 3時間
目的: ビールを瓶詰めして二次発酵
1. 道具の除菌
- ボトル40本を除菌
- キャップ、サイフォンも除菌
2. プライミングシュガーの準備
- 120gの砂糖を200mlの水で煮沸
- 冷ます
3. ビールとシュガーを混ぜる
- 別容器にビールを移す
- シュガーシロップを加える
- 静かに混ぜる
4. 瓶詰め
- サイフォンで各ボトルに充填
- 瓶の首下2cm程度まで
- キャップで密閉
5. ラベリング
- 日付を記入
- レシピ名を記入
ボトリングのポイント:
- 酸素の混入を最小限に
- 泡立てない
- プライミングシュガーは正確に計量
熟成期間(2週間)
1-7日目:
- 瓶内で二次発酵
- 炭酸ガスが発生
- 20℃程度の室温で保管
8-14日目:
- 味が落ち着く
- 炭酸が馴染む
- 冷暗所で保管
14日目: 試飲!
- 冷蔵庫で1日冷やす
- グラスに静かに注ぐ
- 底1cm程度は残す(酵母)
完成予定のビールの特徴
外観
- 色: ゴールデンアンバー(琥珀色)
- 泡: クリーミーな白い泡
- 透明度: やや濁りあり(問題なし)
香り
- 柑橘系(グレープフルーツ、オレンジ)
- 軽い花の香り
- モルティな甘い香り
味わい
- バランスの良い苦味と甘味
- ホップの柑橘フレーバー
- クリーンで飲みやすい
- 後味はやや苦め
マウスフィール
- ミディアムボディ
- 適度な炭酸
- なめらかな喉越し
アレンジアイディア
このレシピに慣れたら、以下のアレンジを試してみてください:
ホップの変更
- Citra: よりトロピカルな香り
- Centennial: より強い柑橘香
- Amarillo: オレンジ系の香り
麦芽の追加
- ウィートモルト 200g: よりクリーミーな泡
- ミュンヘン麦芽 300g: よりモルティな味わい
- クリスタル麦芽 60L: より濃い色と甘味
ドライホッピング
- 発酵5日目にホップ20gを追加
- より強いアロマが得られる
まとめ
このシンプルなペールエールレシピは、ホームブリューの基本をすべて学べる完璧な最初の一杯です。
成功のカギ:
- ✅ 衛生管理の徹底
- ✅ 温度管理の正確さ
- ✅ レシピ通りの分量
- ✅ 焦らず時間をかける
- ✅ 記録を取る
失敗しても大丈夫です。記録を見返して、次回に活かしましょう。
美味しいビールができたら、ぜひ友人や家族と一緒に楽しんでください!
次のステップ
このレシピをマスターしたら、以下の記事もチェックしてみてください:
- IPAの作り方完全ガイド - より複雑なレシピに挑戦
- ホップの種類と使い分け - ホップの知識を深める
- 発酵トラブルシューティング - 問題解決のヒント
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乾杯!🍺