はじめに
ビール醸造のレシピを見ると、ABV、IBU、SRM、OG、FGなど、さまざまな略語や専門用語が出てきます。
この記事では、ホームブリューを始める方が知っておくべき基本的な用語を、わかりやすく解説します。
ビールのスペックを表す用語
ABV (アルコール度数)
ABV = Alcohol By Volume (アルコール・バイ・ボリューム)
ビールに含まれるアルコールの体積比率を示す数値です。
具体例:
- ラガー: 4-5%
- ペールエール: 4.5-6%
- IPA: 5-7.5%
- インペリアルスタウト: 8-12%
- セッションビール: 3-4%
計算方法: OGは発酵前の比重、FGは発酵後の比重を指します。詳しくは後述。
ABV = (OG - FG) × 131.25
例: OG 1.052、FG 1.012 の場合
(1.052 - 1.012) × 131.25 = 0.040 × 131.25 = 5.25%
IBU (苦味の強さ)
IBU = International Bitterness Units (国際苦味単位)
ビールの苦味を数値化したもので、数値が高いほど苦味が強くなります。
具体例:
- ピルスナー: 25-40 IBU
- ペールエール: 30-50 IBU
- IPA: 40-70 IBU
- ダブルIPA: 65-100+ IBU
- スタウト: 25-50 IBU
- ヴァイツェン: 10-15 IBU
ポイント:
- ホップの量と煮沸時間で決まる
- 煮沸開始時に投入したホップほど苦味が強くなる
- 同じIBUでも、モルトの甘味とのバランスで感じ方が変わる
SRM (色の濃さ)
SRM = Standard Reference Method (標準参照方法)
ビールの色を数値化したもので、1は極薄い黄色、40以上は黒色になります。
具体例:
- 2-3: 極薄い黄色 (ライトラガー)
- 3-6: 薄い黄色 (ピルスナー)
- 6-9: 金色 (ペールエール)
- 10-14: 琥珀色 (アンバーエール)
- 15-20: 濃い銅色 (ブラウンエール)
- 20-30: 茶色 (ポーター)
- 30+: 黒色 (スタウト)
決定要因:
- 使用する麦芽の種類と量
- カラメル麦芽やローストした麦芽で色が濃くなる
- 煮沸時間も影響する (長いと濃くなる)
比重に関する用語
OG (初期比重)
OG = Original Gravity (オリジナル・グラビティ)
発酵前の麦汁の比重で、糖分の濃度を示します。 水の比重が 1.000 なので、それよりどれだけ重いかを表します。
具体例:
- ライトビール: 1.030-1.040
- 一般的なエール: 1.045-1.060
- IPA: 1.055-1.075
- バーレイワイン: 1.080-1.120
意味:
- OGが高い = 糖分が多い = 発酵後のアルコール度数が高くなる可能性がある
- レシピ通りにならない場合、麦芽の量や糖化温度を調整する
FG (最終比重)
FG = Final Gravity (ファイナル・グラビティ)
発酵後のビールの比重です。
具体例:
- ドライなビール: 1.008-1.012
- 一般的なビール: 1.010-1.016
- 甘めのビール: 1.016-1.024
意味:
- FGが低い = 糖分がよく発酵した = ドライな味わい
- FGが高い = 糖分が残っている = 甘めの味わい
- OGとFGの差から発酵度がわかる
発酵度 (Attenuation)
発酵によってどれだけ糖分がアルコールに変わったかを示す割合です。
計算方法:
発酵度 (%) = (OG - FG) ÷ (OG - 1.000) × 100
例: OG 1.052、FG 1.012 の場合
(1.052 - 1.012) ÷ (1.052 - 1.000) × 100
= 0.040 ÷ 0.052 × 100
= 76.9%
一般的な範囲:
- 低発酵: 60-70% (甘めのビール)
- 中発酵: 70-80% (バランス型)
- 高発酵: 80-90% (ドライなビール)
より詳しく学ぶ
このガイドでは、ビール醸造の基本的なスペックと比重の用語を紹介しました。
さらに詳しい用語について知りたい方は、以下の記事もご覧ください:
レシピの読み方
実際のレシピ例で用語を確認してみましょう:
スタイル: アメリカンペールエール
バッチサイズ: 20リットル
ABV: 約5.2% (アルコール度数)
IBU: 約28 (苦味・マイルド)
SRM: 8 (金色)
OG: 1.052 (初期比重)
FG: 1.012 (最終比重)
発酵度: 約77% (バランス型)
麦芽:
- ペール麦芽 4.2kg (ベース麦芽)
- カラメル麦芽 40L 300g (色と甘味)
ホップ:
- Cascade 25g (60分) ビタリング
- Cascade 20g (5分) アロマ
酵母:
- US-05 (エール酵母)
このレシピから読み取れること:
- 中程度のアルコール度数
- 苦味は控えめ
- 金色の見た目
- バランスの取れた味わい
- 柑橘系の香り (Cascade)
まとめ
ビール醸造の用語は最初は難しく感じるかもしれませんが、実際に醸造を繰り返すうちに自然と身についていきます。
最低限覚えておきたい用語:
- ABV (アルコール度数)
- IBU (苦味)
- OG・FG (比重)
- 発酵度
この記事をブックマークして、レシピを読むときの参考にしてください。
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